インドネシア飲食マーケット

インドネシア飲食の第一人者!竹谷大世氏にインタビュー【後編】

今回は15年以上インドネシアで飲食店経営をしてきた竹谷大世氏に、飲食店の経営についてインタビューをさせていただきました。インタビュー後編では竹谷氏自身が経営されているお店のことや、経営者としての考え方に関して伺いました。

前編はこちらになります。

出店時に注意すべき2つのポイント

ー 現在17店舗の飲食店を経営されていますが、出店する際に注意している点とは何でしょうか。

1つ目は、出店する地域を良く分析し、地域ごとにブランドを出すことです。同じ市内でも地域ごとに客層や、顧客の行動に大きな差があります。例えば、この地域は夜中まで遊んでいる人が多いなとか。じゃあそういうところにはお酒が飲める店舗を出そう、といった考え方です。そうやって異なるニーズや狙いに対応して出店するのに伴い、ブランドを増やしていきました。違うニーズや狙いがあるのに同じブランドにしてしまうと、お客さんからは同じメニューを期待されるため、それに合わせないといけなくなってしまい、お客さんの期待に応えることが難しくなります。

2つ目は、日本人の中間点的な味付けを行うことです。ジャカルタへ駐在に来る日本人は、東西南北様々な地域からやってきます。ある地域の味付けに近づけようとこだわりすぎてしまうと、他の地域からの人が食べにくくなってしまいます。例えば、団体のお客さんがお店を選ぶ場面で、自分のお店が極端に濃い味付けの料理を作っていると、お客さんの内1人でもその濃い味が苦手だと、団体のお客さんの選択肢に入れなくなってしまう、ということが起きます。だからあえて薄すぎず濃すぎず、みんなが食べられる中間点的な味付けで料理を作っています。もし味が薄いと感じるのであれば醤油やソースをかけてもらえればいいし、お客さんの好みに応じてトッピングして食べてもらえれば良いと考えています。

ターゲットの行動・ニーズをしっかり分析する

ー 竹谷さんのお店には日本人よりもインドネシア人が多く入っているように見えます。出店時からインドネシア人がメインのターゲットだったのでしょうか。

出店時はターゲットをインドネシア人に絞っていた訳ではありませんでした。自分がお店を出し始めた時期のジャカルタでは、日本の味が食べられるお店は少なく、需要に応じてお店を始めました。しかし駐在員は数年すると日本へ帰ってしまうし、後任の方が自分のお店に来てくれる保証はない。また年末年始や日本の休日には日本人は帰国したり、特別な動きをするため売上が不安定になりがちです。それに対してインドネシア人はやはり絶対数が多い。例えばモールにはインドネシア人がたくさん来るし、モールに出店すれば、家賃は高いですが安定してお客さんが入ってきます。現在はインドネシア人の日本食ファンをターゲットの中心にしています。

ー 口コミサイトでも『大東京酒場』は人気のようですが、どのような点が評判に繋がったとお考えですか。

『大東京酒場』は屋台感覚で入れ、”しっぽり感”のある個室居酒屋というコンセプトがうまくお客さんのニーズとマッチしたと思います。オープン当時、既に日本料理の高級店はたくさんあり、今後伸びるのは高級店ではないと感じていたため、ある程度単価を低く落ち着けたお店を出そうと考えていました。広い大衆居酒屋のようなお店も良いのですが、オープン当時は個室居酒屋が増えている動きがありました。最初は日本人もターゲットに考えていたのですが、インドネシアの日本人コミュニティ自体は狭いので、取引関係にある駐在員同士でお店でばったり会ってしまうということがあり得ます。そうなってしまうとせっかくの食事を楽しむことができないので、完全個室じゃないけど、目線はカットできるお店としてデザインをしました。個室にすることで、芸能人も来やすくなって、更にその人のファンもその情報を聞きつけてお店に通うようになるという効果もありました。

ブロックMにある『大東京酒場』は口コミサイトZOMATOでも高い評価を受けている

飲食店経営者としてのこだわり

ー 経営者として実際に現場のお店に足を運ぶことはどれくらいありますか。また訪れる際はどのような点に注意してお店を見ていますか。

基本的に毎日自分のお店には行くようにしています。お店に訪れた時は、一番神経質なお客さんになったつもりでお店の粗探しをしています。接客態度やお店の清潔感、テーブルの上の調味料が足りているか、など細かいところまでチェックし、問題があればすぐにマネジメント陣に報告します。従業員も私がお店にくると、私がチェックをしていることがわかっているので、店舗に訪れるときは従業員がとても緊張しています。もっと覆面で目立たないように来ないと、本当の接客は見れないかもしれません(笑)いずれにせよ、飲食店の経営者が自分のお店に行くことはとても重要だと考えています。

ー 竹谷さんが経営者としてこだわっていることはありますか。

こだわっていることは「ごまかさないこと」です。経営者がごまかしていると、その行動は必ず従業員に伝播していきます。従業員も「私もごまかしても平気かな」と考え始め、売上の一部をくすねたりするようになります。経営者は人間として従業員の見本でなければなりません。ごまかさないことは、お客さんに対しても同じです。お客さんが注文していたのに、注文を取り損ねてしまったメニューがあった時に、曖昧な返事でごまかそうとするのではなく「すみません。聞き取れていませんでした。」と正直に言うべきです。お客さんは怒ってしまうかもしれないけど、誠実でいる方が大事だと思います。いくら店の構えが良くても、接客の悪いお店は駄目です。

ー いくら味が良くても、また行きたいとは思わなくなりますよね。

だから店長は料理とホール両方がわからないといけない。私は板場とホール、両方の経験があり、どちらも理解をしていたので、自分で従業員の教育もしましたし、料理の運び方も教えたので、それが従業員にまで伝わっています。お店に行った際は、両方のチェックに気を配っています。

ー 他にも経営者として大事にされていることはありますか。

私は経営者の役割は「従業員が忙しく働けるだけの仕事を生み出すこと」だと考えています。暇なお店を作ってしまうと、従業員がだれてしまって、接客態度も悪くなります。そうなるとお客さんも入ってこなくなり、負のスパイラルに入ってきます。真面目な従業員は、お客さんの入らない日が続いてしまうと辞めてしまいます。従業員に「働きたくないな」と感じさせてはいけません。充実して働けるだけの仕事を作ってあげることが経営者として重要な役割だと考えています。

今後の展望

ー 経営者としての今後やっていきたいことや、ビジョンはありますか。

将来的にはインドネシアでの日本食をもっと盛り上げていきたいです。そのために飲食店経営において源流となる、仕入れのところから自分たちで掴んでいきたいです。今後は輸入も自社でやっていますという存在になりたい。そうすることで、日系飲食店同士で競争相手になるのではなく、相互にとってプラスになる関係を築いていきたい。

また従業員にも活躍していって欲しいです。自分のお店の従業員が他のお店の引き抜かれた時も「引き抜かれるようになってよかったね」と伝えます。自分のお店の従業員が成長して、他のお店で板長になったり、そういう従業員の受け皿が増えてきたことはいいことだと感じます。たまたまお店行ったら、厨房から「ボス!」って出てきて「お前ここで働いてたのか!」ってなることもあります。それはそれで嬉しい。頑張ってるやないか―い!って(笑)

コメントを残す

*